2014 伊藤啓子スイス ツアー レポート
【3連邦ヨーデルフェスト・ダボス大会】

ツアー終盤について語る前にヨーデルフェストについて少し。
連邦ヨーデルフェストには、2005年のAarau大会に初出場して以来、
私は過去3回の大会に参加していますが、
前回Interlaken大会はゲスト参加という評価もされない残念な参加でした。
これは、2008年のLuzern大会以降、アジアからの参加希望者が増えてくることを懸念して
連邦ヨーデル連盟によって、これからの外国人受け入れに関して話し合われ、
結果、連盟会員でない外国人はヨーデルフェストに出場することができないということが
決定されたためです。
それでも辛うじて参加できたのは、
アジアからの観光客を大切にするInterlaken大会の地元組織委員会によって、
アジアからの参加者をゲストとして迎えるという特別措置によって
形としては参加することができたということです。
ということで、今回のダボス大会への参加は認められないということがわかっておりましたので、
外国人除外の決定が下された2年前から、ヨーデル連盟に対して私は請願を続けて参りました。
連盟会長へ私がこれまでスイスヨーデルに真摯に取り組んできたことを伝える手紙を出し、
彼女からの返信を受けてスイスに彼女を訪ねて直接、訴えました。
私の熱意が通じて、ヨーデル連盟の議題として取り上げていただけることになり、
その連盟会議に対してビデオレターを出し、委員に私の気持ちを伝える努力をしました。
その結果、今回のダボス大会に、スイスパスポートを持った外国に住む会員と同様の扱いで、
外国人も出場することが叶ったのです。
今回、私と妹以外にも日本から参加された方々がいらっしゃいましたが、みなさんは、この私の請願と交渉があったことはご存知ないと思います。



さてダボス大会本番。
ダボスという町は、陸の孤島のように周りに何もない町ですが、
ダボス会議で有名なように様々なイベントを開催しているので、
大会運営についてはとてもよくオーガナイズされていたと思います。
特に駐車場については全国から何万人規模の人が押し寄せるので、
いつも苦労の種だと思いますが、スムーズで駐車に困るということはありませんでした。
また、町の通る大きな通り沿いから各会場に入りやすい配置になっていて、
いろいろの会場を行き来する動線がスムーズで、
これまでの大会に比べ移動が楽だったように感じました。

初日の4日には、スイスアーミーが大会を祝して
アクロバット飛行をするなど、盛り上げ効果もバッチリでした。


私たちは当然、民族衣装に見を包んで会場入りしましたので、
事前に約束していたテレビ、新聞の取材以外にも、そこここで取材を受けました。





明日の本番に備えてそれぞれの会場下見も済ませ、
誰もいない教会会場がありましたので、そこで二人で本番の曲を歌ってみたりしました!
さて今回、妹の武居ゆりは初めてソロで出場することになり、2日目の11:46の登場でした。
曲目はみなさまよくご存知の“Mir saege Dank!”で、
伴奏は2月に来日していっしょにツアーを回った“Quantensprung”の
メンバー、Markus Bircherです。
大会前に、ゴイエンゼーのヨーデルコーラスのみなさんの前で歌わせてもらったときには、
緊張のあまり声が震えていたゆりですが、スイスの人の前で一人きりで歌うという経験もできて、
もちろんMarie-Theres先生のレッスンも受け、マルクスとも2回のリハーサルを経ていましたので、本番は、堂々と落ち着いたパフォーマンスでした。
大きな拍手と歓声を受けてとても感激したのではないかな。
これで彼女もやめられなくなりますよ!






14:04には、私が2つの出場枠の一つとして、
ソロを止めにして選んだスイス人男性とのデュエットです。
デュエットの相手はRoman Wiggerで、来日したことのある
Ruedi Renngliさんの指導するSchibi Choeliのメンバーです。


私が一人の期間に数回リハーサルを積んで来ましたし、
ローマンの声はとても美しく、二人のコンビネーションはなかなかいいと思って臨みました。
曲目は

“Im Gwitter”

これはWilli Valottiが作曲した男女デュエットの名曲で、
ヨーデルの名盤“Chumm Hei”の中で
マリー・テレーズ先生と、先に述べたルエディ・レンクリさんとの
デュエットで取り上げられていた曲です。
いつか男性歌手と歌ってみたいと思っていた曲なのです。
そして、伴奏は有名なUrs Loetscherが弾いてくれました。

美しいマリエンキルヒェの会場で、
Ursの軽妙なアコーディオンが美しく曲を盛り上げてくれましたので、
とてもいいパフォーマンスになったと思います。
会場には、この曲の作曲者のWilli Valottiも駆け付けてくださっていて、
歌い終えたときに大きなアクションで、Ursに“グー”サインを送ってくれたとのこと。
また同じく会場で聴いてくれたルエディ・レンクリさんからも
とても美しいデュエットだったと言っていただきました!

そして、いよいよ大会も最後の最後、21:36という時間に、
B会場で私たち姉妹のデュエットです。


本当に大会オーラスの時間帯にもかかわらず
大勢の人が会場を埋めてくれていました。
伴奏は、ゆりのソロと同じくMarkus Bircher。

曲目は“Gedanke uf dine Waeg”

 デュエット曲としてはとても難しい曲に入るのではないでしょうか。
2月に津田ホールで演奏したときには、私がセカンドパートを担当しておりましたが、
声質を考え、1st伊藤、2nd 武居という組み合わせで歌いました。
鐘の音が響くように、そして歌詞の意味を噛み締めながら歌った演奏は、
スイスの人々の心にも届いたのでしょうか。
歌い終えると大きな拍手と歓声。
それに沢山の方が立ち上がって祝福してくださいました。
6年前のLuzern大会のKKLホールでのスタンディングオベーションを思い出してしまうように心地よかったです!
鳥肌が立って、最後には涙が出たと言ってくれた方がいました。
素晴らしかった、美しかったと口々に感想を述べていただきました。
また多くのスイスの方の感想に、スイスドイツ語の発音がとてもよく、
目をつぶるとまるでスイス人と思ってしまうようだったとも言っていただきました。
ということで、翌日発表になった結果では、武居ゆりのソロ、伊藤・武居のデュエットともに
エアステクラス(最高ランク)の評価をいただきました。
ローマンと伊藤のデュエットに関しては、実はここに一つの課題が残りました。
連盟会員であるローマンは、連盟規則により、
大会の前2年間の地方大会において一定の成績を収める必要がありますが、
私とのデュエットはその規定の地方大会を経ていないため“評価無し”ということになったのです。出場を認めた段階では、この点は特に問題とされず普通に出場許可になったのですが、
どこかから問題提起がされて再検討の結果、今回はこのような措置になったと思われますが、
外国人として参加する私にとって、これはまた一つの乗り越えなければならない課題を突き付けられたことになります。
しかしながら、ローマンとウルスと三人のパフォーマンスは、
私たちにとって楽しくうれしいものでしたので、
良かった!、またいっしょにやりたい!と言って別れました。
いつか日本に二人が来てくれて、みなさんにもお聴きいただけたらうれしいと思っています。


おまけは大会最終日のパレードの様子です




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